中華料理の炒め物などでお馴染みの食材「にんにくの芽」。
シャキシャキとした歯ざわりの良い食感は、男性のみならず女性にも人気があります。しかし、人気の食材であるにもかかわらず、“スーパーで見かけることが少ない”、”収穫している様子を見たことがない”など、謎が多いのもにんにくの芽の特徴です。
この不思議な食材「にんにくの芽」の秘密を、皆さんと一緒に解き明かしていきましょう。
INDEX
- にんにくの芽の正体とは?
- 収穫から流通まで〜国産と中国産の違いを解説
- 知っておきたい栄養成分
- においの成分はアリシン!強くにおうほど健康作用をもたらします
- おいしいにんにくの芽の選び方と保存方法を解説!
- 下ごしらえでおいしさアップ!
- おすすめ簡単レシピ
にんにくの芽の正体とは?
「にんにくの芽」という呼び方をしているため勘違してしまいやすいのですが、私たちは実際に「芽」の部分を食べているという訳ではありません。
にんにくが花をつけるために伸ばす「花茎(かけい)」と呼ばれる部分、これがにんにくの芽の正体です。
春になって暖かくなると花茎はグングンと成長し、やがて淡い紫色の花を咲かせます。
植物が花を咲かせる時には、たくさんのエネルギーを必要とします。花にエネルギーを取られてしまうと、土の中のにんにくが大きく育たないため、にんにくの栽培農家では、花が咲く前に芽(花茎の部分)を摘み取っていきます。
この作業は「芽摘み」と呼ばれ、ここで摘み取られたものが「にんにくの芽」として出荷されます。
なぜ「花茎」の部分が「芽」と呼ばれるようになったのか、詳しい理由はわかっていませんが、にんにくの球のりん片から生えてくる芽が成長して花茎になること、中国から日本ににんにくが伝わった時に「にんにくの芽」と名付けられたことなどが理由ではないかと考えられています。
収穫から流通まで〜国産と中国産の違いを解説
にんにくの芽が収穫される時期は、5月下旬〜6月初旬。
にんにく球の収穫を目前に控えた頃に行われます。
日本では、東北地方がにんにくの産地として有名ですが、寒冷地のにんにくは芽が育つ前に球の収穫期を迎えるため、芽摘みを行う必要がほとんどありません。
そのため、日本でにんにくの芽が収穫されるのは、青森県の一部の地域か温暖な四国・九州の地域にほぼ限定されます。
また、芽摘みは機械で行うことができず、1本1本手作業で摘み取らなければならないため、非常に労力がかかる作業です。労働力が不足している日本の農場においては、にんにくの芽を大規模に収穫することのできる農家は滅多にありません。
一方、中国では芽を食用とすることを目的として品種改良されたものが栽培されており、1年を通してにんにくの芽が収穫されます。さらに、日本に比べて農業人口も多いため大規模栽培が可能です。
こうした背景から、国内で流通しているにんにくの芽の約99%は中国産で占められています。
スーパーなどで、国産のにんにくの芽を見かけることが少ない理由がおわかりいただけたでしょうか?
もし、国産のにんにくの芽を見かけたら迷わず手に入れましょう!
にんにくの芽も自宅のベランダで栽培ができます!
知っておきたい栄養成分
にんにくの芽は、緑黄色野菜に分類されており栄養価が高い野菜です。
成分の構成は生にんにくとほぼ同等で、ビタミンB1の吸収を助け疲労回復などに効果があるアリシンの元の成分「アリイン」、腸内環境を整える「食物繊維」などが含まれています。
これらの成分は、生にんにくと比べて含有量は少ないですが、カロリーが低くヘルシーで、にんにくよりも多くの量を食べることができます。
また、抗酸化や美肌効果がある「ビタミンC」、丈夫な歯や骨をつくる「カルシウム」などは、生にんにくよりも多く含まれています。
特に「カロテン」は、生にんにくにはほとんど含まれていない、にんにくの芽ならではの栄養素です。
カロテンは、体内に吸収されると、ビタミンAに変化して目や粘膜の正常化のために働き、免疫細胞を活性化してくれます。
このように、にんにくの芽は生にんにくにも負けないほどの高い栄養価を持っている野菜なのです。
にんにくの栄養成分はこちらで詳しく解説しています!
においの成分はアリシン!強くにおうほど健康作用をもたらします
にんにくの芽には、におい成分である「アリシン」を作り出すため、にんにくと同じく独特の「におい」が感じられます。
しかし、生にんにくに比べるとアリシンの生成量は少ないため、生にんにくほどの強いにおいを感じることはありません。
にんにくの芽に含まれるアリシンの元のアリインは、有機栽培など健康的な土壌で育つほど含有量が高く、それに比例してにおいも強くなります。また、アリシンはにおい成分であると同時に、さまざまな健康作用をもたらす成分でもあります。
日本では、にんにくの強烈なにおいは敬遠されるため、においは少ない方が良いと思われるかもしれません。しかしながら、においを強く感じるにんにくの芽からは、より多くの栄養を摂取することができるのだと覚えておきましょう。
COLUMN
にんにくの芽に毒はあるの?
じゃがいもを冷蔵庫で保存していると、いつの間にか「芽」がたくさん出てきてしまうことがありませんか?
実は、じゃがいもの芽にはソラニンとチャコニンという天然毒素が含まれているため、取り除いて食べなければ、腹痛や吐き気、下痢などの症状を引き起こしてしまうことがあります。
一方、にんにくも、りん片を冷蔵庫に入れていると、中心部から「芽」がニョキニョキと伸びてくることがあります。この芽が伸びてくる様子が、じゃがいもの芽に似ていることから、「にんにくの芽にも毒素があるのでは?」と思われてしまいがちです。
しかし、心配はご無用。
にんにくの場合、有害な成分は含まれていません。
そもそも、にんにくのりん片から伸びてくる「芽」は、将来地上で成長し、「にんにくの芽」として摘み取られるものと同じなので、安心して食べられます。
おいしいにんにくの芽の選び方と保存方法を解説!
良いにんにくの芽を選ぶためには、まずは「形状」に注目しましょう。
一般的に売られているにんにくの芽は、くねくねと曲がっているものがほとんどですが、太く真っ直ぐ伸びているものには栄養成分がたっぷりと含まれています。あまり硬くなく、弾力性が感じられるものが味わいも良く理想的です。
まれに蕾が付いているものもありますが、その場合も蕾の先端まで弾力があるものが良いでしょう。
形状の次にチェックしたいのは「色」です。
全体的に瑞々しく、“鮮やかな緑色のもの”を選ぶと良いでしょう。逆に切り口が茶色く傷みはじめていたり、全体に黄色みを帯びているものは鮮度が落ちている証拠です。
鮮度を保つ保存方法は、その保存期間によって異なります。
すぐに食べる場合(2〜3日程度)
空気に触れて乾燥するのを防ぐために、チャック付きのポリ袋などで密閉してから冷蔵庫に入れます。
長期保存の場合(1ヶ月程度)
1)熱湯で1分程度さらす
2)冷水で一気に冷やしてザルにあげ、キッチンペーパーなどでしっかりと水気をとる
3)チャック付きのポリ袋などで密閉してから冷凍庫で保存
調理する際は、凍ったままでも大丈夫ですが、常温で少し解凍してから使うと水っぽくならずに済みます。
下ごしらえでおいしさアップ!
にんにくの芽の代表的な食べ方として、炒め物や和え物があります。
実はにんにくの芽は、下ごしらえを調理法ごとに変えることで、おいしさや味わいが変わります。
それぞれ紹介していきます。
炒め物の下ごしらえ
炒め物などの料理に使う際には、「下処理」が大切です。
まず、根元の硬い部分を2cmほど切り捨てます。
根元近くは筋っぽく感じることもありますが、斜めに包丁を入れて短めにして切っていくと、歯ざわりが柔らかくなり、食べやすく、見た目も綺麗になります。
和え物の下ごしらえ
和え物などの料理に使う際には、「下茹で」をしておくことが大切です。
下茹では、適量の塩を加えた熱湯の中に、にんにくの芽を切らずに(長いまま)投入し、2〜3分茹でてから冷水にさらします。冷えたらすぐにザルにあげ、水気を切っておきます。
こうした下茹でをすることで、火の通りを良くしたり、雑味が取れて甘みを引き出すことができます。
下ごしらえは面倒と思われがちですが、どれも簡単にできる方法です。にんにくの芽を調理する際は、ぜひ実践してみてください。
おすすめ簡単レシピ
にんにくの芽のシャキシャキとした歯ざわりと香ばしい風味を生かすためには、やはり「炒め物」が最適。
牛肉や豚肉、鶏肉などの肉類、イカやエビといった魚介類など、いろいろな食材と合いますが、スタミナを重視するなら『豚肉』を選ぶのが一番。
調味料は、初心者の方にも手軽に味付けができる万能調味料「オイスターソース」がおすすめです。これひとつでしっかりと味付けができ、美味しいにんにくの芽の炒め物が楽しめます。
カンタン手間いらずなレシピをご紹介します!
にんにくの芽と豚肉のオイスターソース炒め
【材料(2人分)】
・にんにくの芽…120g 3〜4cm間隔に切る
・豚もも肉…200g 食べやすい大きさに切る
・ごま油…小さじ1
・オイスターソース…大さじ2
・塩・コショウ…適量
【つくり方】
① フライパンにごま油をひく。
② 熱した油が馴染んだら豚肉、にんにくの芽の順で具材を入れて中火で炒める。
③ 豚肉に火が通ったらオイスターソースを入れてさらに炒める。
④ 塩コショウで味をととのえる。
⑤ オイスターソースがよく馴染んだら、お皿に盛り付けてできあがり。
★ ちょっとひと手間でさらに美味しく ★
・仕上げにごま油をひと回しすると香りが豊かになります。
・豚肉に軽く塩コショウをし、カタクリ粉をまぶしてから炒めるとさらに本格的美味しさに。
・お好みで豚バラ肉や肩ロースで作ってもそれぞれの美味しさが引き立ちます。
・にんにくの芽のシャキシャキ感を調節したい場合は豚肉と別々に炒め、オイスターソースを入れる段階で合わせます。
・にんにくのみじん切りを加えて「Wにんにく」にするのもありかも?
COLUMN
にんにくの芽と豚肉は相性バツグン!?
豚肉に含まれる「ビタミンB1」(別名:チアミン)は、ブドウ糖をエネルギーに変換する働きがあり、人間の活動に欠かすことのできない栄養素です。
しかし、ビタミンB1は水に溶けやすく、体への吸収が非常に悪いため、豚肉だけを食べてもその多くは吸収されることなく体の外に流れ出てしまいます。
そこで活躍するのが、生にんにくやにんにくの芽に含まれる成分「アリシン」です。
アリシンがビタミンB1と結合すると、水溶性のビタミンB1が「アリチアミン」と呼ばれる脂溶性に変化し、体内にとどまって吸収力が飛躍的に高まるのです。
他に、ビタミンB1を多く含む食品には大豆やうなぎなどがありますが、にんにくの芽と味わいの点で相性が良く、手に入りやすいということでも豚肉は群を抜いています。
にんにくの芽と豚肉とは、あらゆる点でベストパートナーと言えるでしょう。
謎が多いにんにくの芽について、さまざまな角度から解説をしてきました。
にんにくの芽には、生にんにくにも負けないほどの栄養が含まれており、また、にんにくとは違った食感と調理方法で楽しめる食材でもあります。
しっかりと下ごしらえして、にんにくの芽を存分に楽しんでください。
それにしても、芽まで栄養満点の「にんにく」って、すごい食材ですね!